広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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  • 掲載ニュース― NEWS ―

    今週の表紙
    車販社と協力しマツダコーナー開設 / 宮崎 佳紀 氏
    NEWSな人
    5月に創業70周年 無事故で信頼勝ち取る / 高野電気商会 髙野 憲一郎 社長
    オリジナル服飾ブランド「L」 8月にギャラリー型店舗を開設 / アデリンルメテ ル メテ アデリン 社長
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コラム― COLUMN ―

                                   
記者が注目する「こぼれ話」
百貨店の衰退

ようやく普段の生活が戻りつつあるが、まだ油断がならない。コロナ禍で広島商圏の商業施設にどのような影響があったのか。コロナ禍後、消費者の価値基準や判断にどのような影響を及ぼすのか。他都市と比較した広島商圏の特徴や街づくり提言などについて、広島修道大学商学部の川原直毅教授に聞いた。
「定点観測すると、地方都市広島ならではの保守的で、横並び感覚、人の目を気にする大衆意識が強い消費者の傾向が浮き彫りになる。そのためか、商業施設にとって非常に重要な商品の品ぞろえや価格設定、店舗レイアウト計画などのマーチャンダイジングが見直しされることなく、長期にわたり固定化されている。ファッションやトレンドに敏感な若者や一定層の好みにマッチした商材が極めて少ない。若者に新感覚のライフスタイルを提案する新業態が進出すれば、紙屋町や八丁堀かいわいの専門店もかなりの打撃を被るだろう」
 広島は他都市に比べてブランド志向が低い。ブランドは費用対効果の側面が強く働くので、自らの個性を磨くという点で最適であるが、ものの価値を高い、安いという判断で決めてしまう傾向が強い。おそらく、教育や生活様式の中で「平等」という概念が植え付けられて、競争するという概念が幼少期に奪われているのではないだろうか。そもそも資本主義において平等という概念は初めからない。義務教育などと、ある一面だけを取ってそれを強調するから成長期に価値観が大きく揺らぐと指摘する。
 東京では、4月から自主的に営業を停止した百貨店が多い。地下の食品売り場まで閉鎖した三越伊勢丹などは4月分だけでも110億円もの赤字を計上。広島の百貨店も地下の食品売り場を閉店し、その分、価格の割安な郊外型ショッピングセンターや身近なスーパーマーケットで生鮮三品が好調に売れた。
 広島商圏では、4〜5月の百貨店の売り上げが前年比56%程度で推移。大都市圏よりも減少幅が小さい。これは普段から百貨店を利用する客層がほぼ決まっており、また、インバンド消費も広島エリアではパイがそもそも小さいのでその分、影響はほとんど見られない。ただし、小売商業の年間販売額は年々減少し、札幌、仙台、福岡に比べて、大型店が進出してもなお市場規模は大きくなっていない。
「百貨店の衰退はいまに始まったことではない。120万人口にあって3つの百貨店が競合。すでに消耗戦に入っており、これから大きく売り上げが伸びることは期待できない。損益分岐点で見れば、1平方メートル当たり年間販売額が100万円を切っているところもあり、存廃の危機にあるといっても過言ではない。売り場はどこも均一化、同質化されており、買い物客にとっては真新しさがない。また、利用客の多くは高齢者という点もほぼ共通しており、これは都心部の交通の利便性に関係している。なおサッカー場の建設によってペデストリアンデッキや歩道、地下通路などが完備すれば、地下街シャレオとの有機的な連携も、また違ったものになる可能性はある。都市計画をどのように考えるのか、それに影響する」
 中心部の空洞化、広島商圏の将来展望など、次号で。

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